事業承継とは、個人事業主や法人の経営者が高齢になり、「ヒト」「モノ」「金」「技術」といった会社の経営資産を後継者に引き継ぐことをいいます。
後継者は、子どもなど自分の親族の場合もあれば、社内の優秀な従業員に引き継ぐ場合もあります。もしも、後継者が見つからない場合は、第三者を後継者として事業を売却する場合もあり得ます。
日本の企業の99%以上は中小企業であり、かつ、少子高齢化が著しく進んでいるという背景もあり、自分の身の周りに後継者がおらず、事業の存続が危ぶまれています。
また、日本は「モノづくり大国」ともいわれており、非常に高度な技術を要する事業も数多く存在し、事業が存続するためには後継者へ「技術の引継ぎ」も行わなければなりません。「技術の引継ぎ」は短期的に行えるものではなく、やみくもに事業承継ができるわけではありません。
できるだけ早い時期から事業承継の準備を始めなければなりませんし、その一方で、なかなか事業承継が進まず、廃業を選択せざるを得ないことが大きな社会問題となっています。
事業承継のうち、「誰かに財産を引き継ぐ」という点については、類似手続として、相続・遺贈があります。しかし、事業承継と相続・遺贈とは、似ているようで少し異なります。相続は、たとえば、不動産や預貯金、車など目に見えるモノが対象であることがほとんどです。しかし、事業承継は、そればかりではありません。
事業財産は多岐にわたり、事業のブランドや経営に関する権利、取引先といった目に見えないモノも存在し、事業承継の場合は、それらの財産も含め全て引き継ぎます。とくに、事業の期間が長ければ長いほど、事業の規模が大きければ大きいほど、事業財産は数多く存在し、手続きは非常に複雑かつ長期化するといえるでしょう。
また、経営者が亡くなったことにより事業承継の問題が発生した場合、個人としての財産(相続財産)と事業承継の対象となる事業としての財産(事業財産)とを区別して処理しなければならないことも、注意が必要です。
事業承継や相続の手続きの場合、対象となる財産の評価、つまりいくら位なのかを計算しなければなりません。
相続の場合、たとえば、預貯金でしたら口座の残高を見れば分かりますし、不動産の場合も、不動産業者に査定を頼めば、おおよその価値が分かります。場合によっては、税理士などの専門家に頼まなくても手続きを進めることが可能です。
しかし、事業承継の場合はそうはうまくいきません。設備がどれくらいの価値を持っているのか、(事業が株式会社の場合)会社の株はいくらぐらいの評価額なのか、事業が保有する技術や業務はお金に換算するとどれくらいの価値があるものなのか、といったことを計算する必要があります。
また、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産(負債)も考慮したうえで、事業としての総資産はいくらぐらいなのかを計算しなければなりません。
特に、親族ではなく、第三者に事業を売却する手段を選択した場合、事業の適切な価値を計算し売却価格を設定しなければ、買い手は見つからないでしょう。
税理士はいわば、税務・会計といったお金のプロフェッショナルですから、会社の決算書などを参考にしながら、事業が保有している財産の正確な価値を算出することができます。
事業承継は、一日二日で完了する手続きではなく、数か月・数年単位で考えなければなりません。事業承継をスムーズに進めるためには、負債があれば、できるだけ負債を減らすなどして、事業の財産を健全化し、その状態を保たなければなりません。特に、後継者である譲り先を第三者にする場合は、プラスの財産を多くした方が、譲り先も見つかりやすくなります。
この点、税務や会計のプロフェッショナルである税理士は、様々な助成金や補助金の活用のアドバイスをすることができ、節税につながることもできます。また、様々な条件はありますが、「事業承継税制度」を活用することにより、本来ならば発生する相続税や譲渡税を免除してもらうことも可能です。
事業承継を考えている経営者のなかには、事業承継をする前に黒字転換したり、資金繰りや事業計画を整備したいという方も少なくありません。その背景には、できるだけ会社の財産を健全化した方が、譲り先である買い手が早く見つかるという現実的なお話もありますが、それ以外にも、「自分の代で、膿はしっかりと出し切ってしまう」といった経営者としてのプライドも背景にあるようです。
この点、事業承継をする前の事業の健全化にも税理士が一役買います。事業の健全化、つまり事業の経営を安定化させるためには、赤字であれば黒字に転換し、黒字経営を継続しなければなりません。また、リーマン・ショックや新型コロナウィルスの騒動など、予測困難な社会状況もあり得ますから、金融機関から融資を受けられるような経営状態と信用を保っていなければなりません。
この点、税務・会計のプロフェッショナルである税理士からこそ、同一業界や同一規模の他社の事情や社会動向を踏まえて、どのような措置を講じたらよいのか、経営面全体のサポートをすることが可能になります。
●東証プライム上場企業から個人事業主に至るまで、これまでに豊富な顧問契約の取扱実績を持つ弁護士法人プロテクトスタンスと連携し、経営支援のノウハウをご提供いたします。
●税務面だけでなく、事業承継時に発生する契約法務やコンプライアンス、事業の許認可の更新、知財や登記業務までワンストップでのトータルサポートが可能です。
●税務顧問となれば、事業承継の前段階から経営の健全化、事業承継の計画、実施まで、時間をかけて無理のない準備を行うことが可能です。
事業承継は、数か月から数年単位で綿密な計画を立てて進めていかなければなりません。市販の書籍や場当たり的な対応ではなく、業界業種、事業規模、財産状況などによって、個別具体的な計画を組み立てなければなりません。
私たちは、事業資産の計算や税務に関するサービスはもちろんのこと、士業の総合リーガルグループとして、事業承継に必要な様々の手続きをワンストップで対応することができます。どうぞ、ご遠慮なくご相談ください。
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