社員旅行の実施にかかった費用を会社が負担した場合、「福利厚生費」として経費計上することが可能です。ただし、一定の条件を満たしていなければ、経費として認められなくなるため注意しましょう。
経費として認められるための条件や、計上する際のポイントなどを解説します。
(1)旅行期間が4泊5日以内
社員旅行の期間が4泊5日を超えると、経費として計上できなくなります。海外へ行く場合は機内泊が日数に含まれないため、現地での滞在日数が4泊5日以内であれば、経費計上が可能です。
(2)全従業員を旅行の対象にしている
全従業員を社員旅行の対象にする必要があります。役員や成績優秀者のみを対象にするなど、旅行の参加者を限定する場合は経費として認められません。
(3)半数以上が旅行に参加する
社員旅行の対象者だけでなく、参加者の人数にも一定の条件があります。具体的には、50%以上の従業員が旅行に参加しなければ、経費として認められません。
従業員の人数は、パートやアルバイトの従業員も含めて計算します。また、支所や工場などの単位で旅行を実施する場合は、会社全体ではなく、それぞれの職場で50%以上の参加が求められます。
なお、全従業員に対して社員旅行への参加を募ったものの、従業員の都合などで参加人数が50%を下回ったようなケースでも、旅行の目的や会社が負担する金額などよっては経費計上できる可能性があります。
(4)会社が負担する金額が高額ではない
社員旅行にかかる費用を会社が負担する場合、本来は給与の一部として課税の対象となります。しかし、会社の負担が少額であれば、経費として計上することが認められます。
これは、「少額不追求」という税務上の考え方によるもので、従業員に供与する経済的利益が少額の現物給付であれば、経費として計上しても追求されません。
「少額」の基準としては、1人あたり10万円程度の負担が目安と考えられています。ただし、少額と認められる具体的な金額が国税庁などから提示されているわけではないため、注意が必要です。
(5)不参加の社員に金銭を支給しない
社員旅行に不参加だった従業員に対し、不公平感が生じないよう金銭を支給したいと考えるかもしれませんが、金銭の支給は福利厚生費として認められないため、経費として計上できません。
さらに、自己都合で不参加だった従業員に金銭を支給した場合、金銭を受け取った従業員だけでなく、社員旅行に参加した従業員も課税対象になる可能性があるため十分に注意しましょう。
(6)家族など従業員以外の参加費用を会社が負担しない
家族などを社員旅行に連れていきたいと希望する従業員もいるでしょう。旅行に同伴すること自体は問題ありませんが、同伴者の費用は経費として計上できません。
そのため、同伴者の費用については、従業員や同伴者が自己負担することになります。また、同伴者の費用を会社が負担していないことが明確にできるよう、請求書や領収書など、費用負担の詳細がわかる資料を保管しておきましょう。
(7)家族経営の会社は注意
家族経営の会社が社員旅行を実施する場合、単なる家族旅行との区別が難しいため、経費として計上できるかどうか、慎重な判断が求められます。経費として計上したい場合、市場調査など旅行の目的を明確にして、その結果を税務署などに提示できるようにすることが重要です。
(8)社員旅行を経費として計上するためのポイント
社員旅行を経費として計上するために、証拠となる書類を保管し、税務調査などの際に提出できるようにしておきましょう。たとえば、次のような書類です。
社員旅行が会社の福利厚生の一環であることを明確にするため、就業規則に定めておくことも重要です。定期的に社員旅行を実施していることや、全社員を対象にしている点などを記載しておきましょう。
また、社員旅行に関するさまざまな費用負担について、あらかじめ就業規則に定めておくことをおすすめします。
たとえば、旅行先が海外で、参加するためにパスポートを取得する必要がある従業員がいる場合、パスポートの取得費用を会社が負担する旨を就業規則に定めておけば、経費として計上することが可能です。
社員旅行は社員同士のコミュニケーションが活発になるため、ぜひ開催したいと考える会社も多いでしょう。しかし、旅行にかかった費用を経費として計上するためには、さまざまな条件を満たさなければなりません。
また、旅行の内容が類似していても、個別具体的な事情によって課税の取り扱いが異なる可能性があるため、経費として計上できるかどうかの判断が難しいケースは少なくありません。
適切に経費として計上するためにも、社員旅行を実施する際はぜひ税理士法人プロテクトスタンスへご相談ください。グループ法人の社会保険労務士とも連携しておりますので、就業規則についてもご相談いただけます。